2015年度 理事長所信

はじめに


第52代理事長
石原 毅

 私が伊勢崎市の住民となったのは、 社会人になってからである。 幼少時代は父親の転勤によって全国各地を転々とし、 その後も進学、 就職の度に移住を繰り返し、 同じ地域に 4 年以上住み続けるという事はなかった。短期間のうちに各地を転々とする生活に違和感はなかったが、 今にしてみれば、 心のどこかで自分にとっての故郷を求めていたように思う。 現在はこの伊勢崎市という地域に家庭を築き、 仕事を持って日々の生活を送っている。 しかしそれは偶然ではなく、 いつかはこの地に住みたいと思い続けてきたからである。 きっかけは学生時代に感じた、 この地域の未知の発展性にある。 それは伊勢崎市の西部地区が、 今ほど開発されていない時期であった。 この地域を訪れる度に新しい施設が建設され、 人口も地方の自治体としては珍しく増え続けており、 活気に満ちた若々しいまちが、 とても魅力的に映った事を今でも覚えている。 また、 住民の人柄もよく、 市外からの転入者をあたたかく迎え入れてくれる雰囲気が、 自分にとってはありがたかった。 今、 自分にとっての故郷は、 伊勢崎市であると断言できる。 そしてこの地域の将来を想い、 自分にできる事は何か、 常に考え真剣に取り組んでいる。 これは青年会議所(JC)という団体に所属して、 これまで運動を行ってきたからに他ならない。もし JC に入会していなければ、人の為、地域の為に運動をするという考えを持つ事も、実際に行動を起こすという事もなかったと思う。

 JC は 「明るい豊かな社会」 の実現を理想とし、 これまで運動を行ってきた。 日本の JC 運動は 1949 年(昭和 24 年)、三輪善兵衛先輩をはじめとする 48 人の青年によって「新日本の再建は我々青年の仕事である。 」とし、戦後の焼け野原の中から始まった。当時の日本は、物資も食料も十分になく、 生活する事さえ困難な状況で、 明るい社会とは程遠い世の中であった事は想像に難くない。 我々の先輩方は、 そのような国難の時代に、 自ら率先してまちづくりに取り組んだ。 それから半世紀以上が経過し、 私たちの生活は、 比べ物にならないくらい豊かになり、 創始の時代に掲げた理想は実現したはずである。 それでは現代社会にとって、JC はその目的を達成し、運動を継続する意義が無くなったのだろうか。決してそのような事はない。 依然として、 この国を取り巻く情勢は非常に厳しく、 解決すべき難題が山積しており、多くの国民が、将来に対しての不安感を払拭できないでいるのではないか。

 JC は、これまで一貫して次世代を見据えた運動を展開しており、今も新たな理想像へ向けた事業を展開している。 そして今の事だけを考えた短期的な視点ではなく、 地域の誰もが、将来に対して夢や希望を持った 「明るい豊かな社会」 となる事を常に目指している。 その為に我々は、 先見性はもとより、 運動の明確なビジョン、 リーダーシップ、 そして自ら率先して行動に移す実行力など、 あらゆる要素を備えるべく日々活動している。 これらの活動の中で最も重要な要素となるのが、 意識の変革である。 人の意識というのは、 余程の強いきっかけや、動機がなければ変わらないものであるが、JC という団体は、様々な活動を通して意識変革のきっかけを与えてくれる、 稀有な存在なのである。 これまで我々の先輩方が本気で世界を、 日本を、 そしてこの地域を少しでも良くしたいという、 強い使命感を持って運動してきた JC だからこそ、 本気で取り組む事で自分自身の意識変革ができるのである。 私自身、入会当初は意識していなかったが、 この想いは先輩方からの教えや、 様々な事業を経験する度に強くなってきており、同時に一人でも多くのメンバーと共感したいと感じるようになった。

 そして 2015 年度、伊勢崎 JC で実施する様々な事業を通して、全メンバーが一丸となって地域の永続的な繁栄と、 この地域で暮らす子供達が、 夢や希望を持って成長できる社会を目指していきたい。


頼れる地域の公益法人

 伊勢崎 JC は、 創立後 49 年目にあたる 2012 年 12 月 3 日、 社団法人から公益社団法人へと移行し、新たな組織形態での JC 運動の一歩を踏み出した。これまでの沿革は、1964 年2 月 29 日に日本青年会議所より全国で 257 番目に入会を認承され、 1971 年 11 月 8 日に社団法人という法人格を取得した。公益社団法人への移行は法人化以降、実に 41 年ぶりの組織変更であった。発端は、2008 年 12 月 1 日から施行された、公益法人制度改革関連 3 法案によって日本全国に約 24,000 ある社団法人、財団法人が 5 年間の準備期間の後、一般社団・公益社団、 一般財団・公益財団へと、法人格の移行を余儀なくされた事にある。 もし申請を行わずに 5 年が経過した場合、自動的に解散となってしまう為、移行手続きに携わった担当者は例外なく、 その作業に膨大な時間を費やす事となったのである。 これが単に法人の名称が変更になるというだけの話であれば、 それほど難しい問題ではない。 しかし公益社団法人へ移行するという事は、 定款や会計制度の変更による会務運営の大幅な見直しや、 年間支出額の 50%以上を公益目的事業に充てなければならないという制約が生じる事を意味する。 その為、 これまで毎年実施されていた、 対内事業の予算縮小などの対応を迫られる事となったのである。 また、 移行に関しては一般社団法人という選択肢もあったため、 そちらのほうが我々の運動に適しているのではないか、事務負担の増加を避けられるのではないか、という意見もあった。しかし当時のメンバーは、今後の伊勢崎 JC の在り方や進むべき道を考え抜き、様々な議論を繰り広げ、2010 年度 9 月定時総会において、地域に根差した公益活動を行う法人として、 我々が目指すべき法人格は、 公益社団法人であるという結論に至ったのである。

 公益法人制度改革の目的は、民間非営利部門(公益法人)が、日本の社会経済システムの中で、 その活動の健全な発展を促進させる事にあった。 我々は単に制度の順守のみを目指したのではなく、 これまで伊勢崎 JC が半世紀近く継続してきた運動が、 公益の為であったと立証すると共に地域の誰もが信頼する、 頼れる団体として更に進化して行く覚悟を持って、 移行手続きを開始した。 結果的に、 すべてのメンバーがこの決断に至るまで、 実に 2 年以上の歳月を費やしたのである。 伊勢崎という地域の発展を通して日本のみならず、 世界の繁栄をも目指し、JC という団体を創立された先輩方の決意や情熱、そしてこれまでの偉業は計り知れない。 しかし我々も決断に至るまでの様々な経験を通して、 創始の想いに近づいたのではないかと考えている。

 公益社団法人への移行後、2015 年度で 4 期目を迎えるが、法人格の維持、継続には様々な手続きが必要となり、 相当の負担が生じている。1 年間で組織、 役職がすべて入れ替わる単年度制というルールの中で、 今後もこの組織形態を維持、 継続し更に成長させていく為には、 引継ぎ体制の強化や、 申請書類作成のシステム化、 合理化を更に徹底する必要がある。歴史と伝統を尊重しつつ、同時に時代の変化に柔軟に対応する事によって、5 年、10 年後に公益社団法人への移行という重大な決断が正解であったと、誰もが実感できなければならない。 そして地域の皆様にとって欠かす事の出来ない、 頼りある団体として存在し続ける事が、我々伊勢崎 JC の使命なのである。


世界組織としてのスケールメリットの活用

 1915 年にアメリカのミズーリ州、セントルイスから始まった JC の運動は、長い歴史の中で世界組織として全世界に展開されており、2014 年度時点において、世界各国に 120 の国家青年会議所(NOM:National Organization Member)が存在している。

 公益社団法人日本青年会議所は、その NOM の一つとして国際青年会議所(JCI:Junior Chamber International)に加盟し、日本青年会議所本会と、10 の地区協議会及び、47 都道府県ごとのブロック協議会で構成されている。 その活動は、 スケールメリットを活かした広域的な事業の他、 各地域の青年会議所(LOM : Local Organization Member)及び、 JCIとの連絡調整の機能を担っている。 地域を想い、 率先してまちづくりを行う事、 その為の人財を育てる事が、JC 運動の主要な目的である事は言うまでもないが、もし LOM 単体の活動のみを行っているとしたら、 その成果にはおのずと限界が生じる。 また、 地域の課題を解決する為のより良い手法として客観的、広域的な視点をもつ必要があると考える。

 JC は日本国内だけをみても、全国に 696 の LOM があり、約 37,000 人(2014 年 1 1 月時点) のメンバーが存在し、 それぞれの地域で素晴らしい事業を展開している。 その情報を共有し、 運動に反映する事ができれば、 はるかに良い事業を実施する事が可能となるはずである。

 この大きなスケールメリットを活用する手法として、 日本 JC への出向という選択肢が用意されているのである。 この地域の課題に真摯に取り組み、 より良い社会にする為には、 日本という国家について、 さらには全世界を対象とした、 国際的な視野で考える事も必要だと考える。JC は世界組織として、そのような機会も与えられている。2015 年度は JCI 世界会議が、 金沢の地で行われる。 例年であれば、 参加する事が困難な国際会議の場を経験する事で、JCI の世界的な運動を理解し、今後の LOM での運動や事業に活用できると考える。

 出向者は、 出向先の委員会、 会議体の事業を通して様々な経験や情報、 そしてかけがえのない全国各地の人脈を得る事で、 大きく成長する事ができる事から、 出向を経験したメンバーは、 地域での運動に欠かせない人財になりうると考えている。 自分自身、 通算 6 年間に及ぶ出向経験によって得られた経験や人脈は、JC 運動のみならず、仕事上のあらゆる場面で役立っていると実感している事から、一人でも多くのメンバーに出向の経験をしていただきたいと強く感じる。 その一方で、 出向者は LOM と出向先の活動が重複し、 大きな負担が生じる事も事実である。もし、活動の実績やその内容が、LOM へ十分に周知されないのであれば、 出向者の意欲が削がれるだけでなく、 出向先で得た経験をフィードバックさせる機会すら失ってしまいかねない。 そのような事態を避ける為に、 出向者の活動実績を紹介する機会を今まで以上に増やし、 情報を積極的に配信する事によって、 貴重な経験やノウハウを、LOM 事業へ還元できる仕組みが必要となる。また、出向先で行われる諸会議への訪問や、開催される事業の周知及び参加の呼びかけを促し、 実際に事業を経験する事で、 出向者の精神面での支援と同時に、参加者の成長に寄与できると確信している。


質と機動力の両立

 我々JC メンバーは、 自身の家庭を支え、 仕事を持ちながら JC 運動を続けている。 当然、私生活と仕事はどちらも欠かせないものであり、いずれも尊重しながら運動を行わなければならない。 メンバーは入会と同時に、 そのバランスをとる事に悩み、 常に苦労し続けている事と思う。 すべてを犠牲にする事なく、 地域の為の運動を継続する為には、 限られた時間を最大限有効に活用する、という考え方が必要になってくる。JC 運動の本分は、まちづくりという公益事業を通して、 地域に我々の運動を発信する事であるが、 委員会で検討した議案が事業として実施されるまでには、 正副理事長会議、 本部会議、 そして理事会と多くの時間を費やし、 慎重な審議を経る事となっている。 これは我々の事業を遂行する上で、 欠かす事のできない手続きであるが、 会議自体は過程であって目的ではない。 したがって、 同じ成果を上げる事ができるのであれば、 会議の時間は最小限の時間に収める事が望ましい。 これを実現する為には、 要点を絞った本質的な議論を追求し、 シンプルかつ効率的な会務運営を徹底する事が必要である。

 例えば、 事業計画書の上程に関して、 各種会議の参加者が前回会議からの変更点のみ把握できるように、 読上げ項目を限定する事で時間の短縮と、 より良い事業を行う為の本質的な議論が可能となる。 また、 事業計画書のフォームを改善する事で、 入力の簡略化とミスの軽減を実現し、 同時に計画書の閲覧性を向上する事で、 担当委員会が事業を計画する際の負担の軽減と、 事業目的の明確化による質の高い事業を計画する事が可能となる。 また、 審議する立場からも、 審議すべきポイントが明確になる事で、 より具体的な指摘やアドバイスが可能になるはずである。

 近年、 会員数の減少により、 入会間もないメンバーが委員長として事業計画書を作成する必要が生じている。 もし、 短期間で質の高い事業計画書が作成出来るようになれば、 事業内容を検討する為の時間的な余裕ができ、経験年数によらずこれまでの実績を活かした素晴らしい事業を展開できるはずである。 今まで培われてきたノウハウを活かし、 質の向上と、時間の短縮を両立する仕組みやツールを継続的に創り出し、年度の途中でも順次採用する事で、我々の運動をこれまで以上に効果的に発信できると確信している。


志を共にする者を求めて

 我々はこれまで、 様々な事業を通して、 地域への発信を行ってきた。 その中で感じる事は、人数的、予算的な制約である。近年、伊勢崎 JC で開催される事業において、募集開始とともに即日定員に達してしまい、 参加希望者が事業に参加できない、 という事が度々発生している。また、2014 年度に実施した事業の参加者から、 「来年も是非参加したい。 」という要望も多数頂いている為、 募集定員を、 これまで以上に増やす事が出来ればよいと常に感じている。 その実現には、 会員の拡大が必須となる。 我々がより強く地域に発信をする為には、今までよりも大規模な組織となって、 参加者の受入体制を確立し、 一人でも多くの方に参加して頂く必要がある。

 我々伊勢崎 JC が、 会員拡大を促進するもう一つの理由は、 平成の大合併によって、 21万人都市となった伊勢崎市に相応しい組織でなければならない、 という事である。 人口的、 面積的に大規模な自治体となったこの地域で、 より広域に我々の運動を展開する為には、 対外事業を担当する委員会を増やし、 会務運営や研修を担う委員会の増設も、 併せて実施する必要がある。 もし 100 名規模の LOM となれば、 人数も予算も不足なく、 これまでにない充実した内容の事業を開催する事が可能となり、 我々の理想とする 「明るい豊かな社会」 の実現に更に近づくはずである。 その為にも、 組織の拡大は早期の実現が望ましく、 具体的には 2、3 年間継続して年間 30 名程度の入会者が必要となる。 JC の運動に賛同いただき、 入会を決意していただくまでには、 双方ともに多くの時間と労力を要する事を考慮すると、 非常に困難な取り組みではある。しかしこの困難に立ち向かい、LOM の規模を拡大する事は、今の伊勢崎 JC には絶対に必要なのである。

 これまで、 会員拡大について、 他 LOM の成功事例を学ばせていただく機会が何度もあった。 その中で自分が理解した拡大の秘訣は、 拡大目標を必達するというトップの確固たる決断と、 組織が一丸となって実際に行動に移す以外にはない、 という事である。 何としてでも、この地域に存在する入会候補者を一人でも多く探し出し、 我々の運動をより大きく、 そして力強く発信できる団体とならなければならない。ただし目標人数ありきで会員拡大のみを追求すれば、 結果として質の高い事業の実施が困難になり、 地域の期待に応える事ができない。 拡大後の組織構成や、 その組織で実現が可能となる事業のビジョンを提示し、 具体的な会務運営についても、 十分に想定すべきであると考えている。 その一環として、 入会間もない新入会員を対象として JC に関する基礎知識から、 人財育成に関する各種研修の実施を予定している。入会当初は、JC での活動に戸惑いや疑問が生じる場面も多い為、少しでも早く馴染めるよう、精神面でのフォローやアドバイスも積極的に行っていかなければならない。私は、伊勢崎 JC に入会したすべてのメンバーが、地域の発展に寄与できる、リーダーたり得る人財へと成長する事、 その為の支援を全メンバーが真剣に取り組む事こそが、 本当の意味での会員拡大であると考える。


愛する地域の創造

 私は、 社会人になってからこの地域に暮らすようになったが、 いろいろな地域で生活した経験の中でも、 本当に素晴らしいまちであると思う。 伊勢崎市は地方自治体の中でも、 人口推移が僅かずつではあるが、 増加傾向にある稀な地域である。 この地域に住みたいと思う理由や魅力は、 居住環境(公園等の施設)の良さをはじめ、 他の地域からのアクセス(主として道路網)の良さ、そして市内各地で開催される恒例行事など、数え上げればきりがない。しかしながら、 全国区で紹介できるような名所、 旧跡や恒例行事、 そして名物等がこれまで存在しなかった。 どこの地域へ行っても伊勢崎市というまちの良さについて、 自信を持って紹介できるよう、 地域の魅力をこれまで以上に発揮するとともに、 広く認知させていく必要がある。 これは伊勢崎市に誰もが住んでみたいと思える、 魅力的な地域であり続ける為に欠かせない事である。伊勢崎 JC では、過去に様々なまちづくり事業を行ってきた。近年では我々自身が、 地域の魅力を再発見する為の取り組みとして、 ディスカッションや勉強会、 そしてまち歩きを実施してきた。2014 年度には、伊勢崎地域に限定したカルタを作成し、地域の魅力について改めて考えるきっかけとなった。 また、 同年に富岡製糸場が世界遺産に登録された事により、 境島村にある田島弥平旧宅が、 絹産業遺産群に併せて登録となった事も非常に大きな出来事である。 今後はこの貴重な史跡を、 単一の施設として活用するのではなく、市内に点在する複数の名所、史跡と併せて、包括的に PR できる体制の構築が望まれる。我々伊勢崎 JC としても、 様々な事業を通してこの地域の魅力を創り出していかなければならない。

 毎年 8 月にいせさきまつりが開催されているが、 伝統的に我々伊勢崎 JC がおまつり広場において、 2 日間にわたり各種ステージイベントを主管している。 広く市民に参加していただける様、 毎年メンバーが新たな趣向を凝らし、 各種団体の披露の場、 市民の交流の場として欠かす事のできない、重要な事業として期待されていると感じている。2005 年に始まった、 いせさき市民百人みこしは、 その回数を重ねるごとに認知度が向上しており、 地域の魅力として誇れる事業に成長してきたと実感している。 また、 まちづくりに積極的に携わる地元の青年団体(伊勢崎商工会議所青年部、群馬伊勢崎商工会青年部、伊勢崎青年会議所)が、「いせさき市民百人みこし実行委員会」 を通して共同で開催しているという事も、 非常に重要な特色である。いせさき市民百人みこしは 2015 年度で 10 年目を迎える。今後も継続させるだけでなく、 より多くの市民、 就学や就業によって市外に住む方にも帰省して参加して頂けるように、さらに魅力を増した事業として発展させていくべきである。

 2015 年 1 月 1 日をもって伊勢崎市は合併 10 周年を迎える。21 万人都市となり一つの節目を迎えるが、 市民の意識調査の結果によれば、 合併によるメリットや合併後の一体感を感じている市民の割合は、 決して高いとは言えないのが現状である。 今こそ、 魅力的な地域であり続ける為に、 合併によるスケールメリットも活用し、 地域ぐるみでまちづくりに取り組む必要があると感じている。 その為には、 伊勢崎地域全体で一体感を持って、 子供から大人まですべての世代が楽しめるものでなければならない。 同じ地域に住むすべての人が、 事業を通して一体になる事ができれば、 伊勢崎市の魅力はさらに高まり、 必ず地域の特色となるはずである。


共に未来を育む

 子供の行動原理の大きな要素は純粋な好奇心や探求心なのではないだろうか。 例え、 目の前に大きな難題や困難が待っていても、 自分が興味を持てるもの、 楽しいと思うものであれば、 子供たちは進んで行動し、 その経験を通して新たな学びを得るはずである。 普段、 学校や家庭では体験できない様な事業に参加する事で、 難題や困難を克服する力を養い、 自分自身で考え、率先して行動できる人財となる為の基礎ができるはずである。

 日本国民は満二十歳になると国民の権利である選挙権を持つ事になる。次世代を担う子供達が成人した際に、 自らの意志で地域や国家の代表者を選ぶ事は、 非常に重要な事である。しかし、第 46 回衆議院議員選挙(平成 24 年 12 月 16 日)に関して財団法人明るい選挙推進協会が実施した意識調査によると、 20 歳代前半の投票率は 35.30%にとどまり、 もっとも投票率の高い 60 歳代後半の投票率 77.15%と比較すると半分にも満たない。これまでも若年世代の選挙における投票率の低さは、 常に指摘され続けてきたが、 いまだに改善の兆しは見られない。 これは政治や選挙に対して、 選挙権を与えられている意義を十分に理解していない事や、 投票結果に我々の要望が反映されていないと感じているからではないか。 これに対し、 中高齢者の投票率は比較的高いため、 どうしても中高齢者向けの政策が優先されてしまうという構造的な問題がある。このままでは少子高齢化が叫ばれている現代日本において、子育て中の若年世代の要望を十分に反映した政策を実施する事ができず、事態は悪化するばかりである。 若年世代の選挙に対する関心が低い一方で、 子供達は学校での学習を通して、政治について興味を持ちやすい環境が整っているのではないかと思う。この重要な時期に政治に参画する経験を持つ事ができれば、 真剣に地域の事を考え、 将来積極的に投票をするようになるはずである。 また、 子供が普段感じている疑問や問題意識を知る事で、 次世代を担う子供達がどのような社会を望んでいるのか、 理解する重要な機会となる。 そして、 子供達が積極的に問題に取り組む姿勢を大人達が見る事で、若年世代の政治への関心を喚起する事ができるはずである。

 個人の人格形成において、 非常に重要な時期にある子供は、 友人や周囲にいる大人たちとの人間関係の中から様々な体験を通して成長していく為、周囲にいる人間の影響が最も強く反映される。 その中でも大人が果たす役割は、 先人としての知恵や経験を通して、 次世代を担う人財となるように導いていく事である。子供にとって最も身近な存在である大人は、親や学校の先生であると思うが、祖父母や親戚、地域の住民、そして我々JC メンバーとの触れ合いを通じて、 地域ぐるみで子供の成長を見守る事が重要である。 自分自身の幼少期を振り返えると、 将来を想像する上で身近にいた大人、 特に父親の姿が一番印象に残っており、自分が現在の職業を選択したきっかけや、仕事へ取組む姿勢も当時の経験が強く影響していると感じている。 特に記憶に残っている思い出は、 父親の仕事をしている姿や、 職場の雰囲気に触れた経験である。 今では仕事の体験ができる施設はいくつか存在するが、 子供にとってはリアリティーを追求した経験が必要だと強く感じている。実際の仕事の場面を想定し、 大人と共に本物の仕事道具を扱う事が重要である。 子供にとっては、 大人が普段目にしている光景を見て実際に経験する事で、 自分の将来の姿を具体的に描けると考える。 更に、身近な大人たちが日々の生活を充実して送っている姿を見る事で、将来社会人となる事に、夢や希望を持つ事ができるはずである。子供と大人との関係は大人が子供に物事や経験を教えるだけでなく、 時には大人が子供から学ぶ事も必要である。 事業を通して世代は違ったとしても、 同じ時間を共有し、 共に学ぶ事で大人も子供も成長でき、 相互理解が育まれるような社会となる事を目指していく。


結びに

 我々JC は、単年度制の中で運動を続ける団体であり、1 年間という期間で実施できる事業も、その中で成し遂げられる事にも限りがある。しかし、2015 年度に実施するすべての事業は、 諸先輩が築いてこられた、 かけがえのない礎があるのだから、 これまでに開催されたどの事業よりも、磨きをかけて洗練されたものとしなければならない。そして、2016 年度以降に展開される事業も、 同じ想いで進化を続ける事を願っている。 その上で、 今までより少しでも良い地域にしたいと想い続ける事こそが、伊勢崎市に誰もが住みたいと思うような、魅力的なまちであり続ける為に必要な事であると確信している。

 公益社団法人伊勢崎青年会議所 第 52 代理事長として、 諸先輩方のまちづくりに対する偉大な精神を引き継ぎ、 自分自身の持てる精一杯の情熱で誠心誠意、 任期を全うする事を誓い、理事長所信とする。