2019年度 理事長所信

【はじめに】

第56代理事長
栗原 弘充

 青年は「力」である。伊勢崎青年会議所設立趣意書冒頭の言葉です。青年は若さであり、若さは力です。無論、精神的な若さに年齢の制限はありませんが、青年会議所は青年が躍動するために、正会員は満20歳から満40歳までの年齢構成を保ち、単年度制度を維持しています。これは、常に能動的に行動することで、変革者たらんとする姿勢を示すためです。そして、組織の停滞、権力の集中を防ぎ、時代背景に即す運動を展開していく、それこそが青年会議所の在り方です。

 地域の未来を担っていく青年が、現在からの未来を見据え、青年会議所運動を展開し、次代へ紡いでいく、この好循環を護ることは私たち現役メンバーの責務です。若さという力を存分に活かし、明るい豊かな社会の実現に向けて、未来を共に切り拓きましょう。

【力強さと柔軟性を兼ね揃えた会員資質の向上のために】

 青年会議所メンバーとして活動できることは、経済人としての仕事が成り立ってのことでしょう。仕事と青年会議所活動の両立というのはメンバーが常に抱えるテーマです。

 青年会議所での学びは個人の自立性を高め、仕事にも好影響を及ぼします。また、青年会議所での学びを活かし、実際に社会でご活躍される方も沢山いらっしゃいます。だからこそ、仕事と青年会議所を極端に線引きする必要はありません。そして、仕事と青年会議所の双方に共通する重要な要素として、学ぶ姿勢と積極的に行動することが挙げられます。情報を取り入れる前提に、自らの思いや意志があれば不必要な情報は淘汰され、取捨選択が機能し、情報処理の消化不良を防げます。誰かの意見に反論から始めるのではなく、先ずは自らの持論を述べ、意志の伴う行動を起こせる青年会議所メンバーであってほしいと強く思います。

 現代は情報社会と叫ばれ、何かを調べるにしても、様々な情報が常に飛び交います。しかし、情報をインプットするだけならば、即座に情報過多になってしまいます。何事もため込むだけでなく、アウトプットすることが大切です。アウトプットを重ねることで自らの思考が整理され、得た情報に対して、自らの考えが芽生え、行動に移せます。自らの意志を以って、能動的に行動し、インプットとアウトプットを繰り返すことで、力強さと柔軟性を兼ね揃えた、強くしなやかなJAYCEEになれるでしょう。

【青年会議所の拡大】

 伊勢崎青年会議所チャーターメンバーが最初に行った青年会議所運動は、青年会議所の意義を伝え、賛同者を募る。即ち、会員拡大だったはずです。ではなぜ、創立56年目を迎える現在も会員拡大を推進するのでしょうか。それは、明るい豊かな社会の実現を目指す青年会議所を存続させるためです。

 青年会議所は常に組織を若く保つために、新陳代謝を正常に作用させる必要があります。青年会議所という、まちづくりの機会をより多くの青年へ提供することで、地域を想う人材が育まれます。より多くの人材を有することで、様々な知恵を出し合うことができます。より多くの視点で検証することで、展開する事業の精度が上がります。そして、数が力となり青年会議所の求心力を高め、更に大きな運動体として青年会議所運動を地域へ伝播できます。

 創立から56年目を迎える現在も青年会議所の意義を伝え、賛同者を募ることの本質は変わりません。会員拡大は組織が存続するための最重要事項であり、まちづくりを実践し、青年会議所運動の魅力を語ることのできる人材を増やす大切なことです。そして、卒業を機に地域へ貢献できる人材を、一人でも多くJC出身者として地域へ輩出することが、JCのブランディングにも結び付きます。

【持続性を高めるまちづくり】

 国土交通省の統計1では、2008年をピークに、100年後の2108年には総人口が明治時代後半の水準に戻る極端な人口減少が予測されています。また、内閣府経済財政諮問会議の統計2では、2040年までに全国約1,800市町村のうち過半数の896市町村が消滅の恐れがあるとされています。研究プロジェクト「オポッサム(OPoSSuM)」注)(研究代表者:千葉大学倉阪秀史)3では、伊勢崎市においても2040年/2015年総人口比7.6%減・年少人口比23.4%減・生産年齢人口比15.3%減・65歳以上人口比25.3%増・75歳以上人口比43.2%増4と予測されています。

 総人口と生産年齢人口が減り、高齢者が増えるという構造では生産年齢層がより多く高齢者層を支える時代が到来し、人的資源・物的資源・財務的資源が減少していきます。この予測だけを見れば将来を悲観し、憂いてしまうかもしれません。しかし、これは各世代が新たな構成比をベースに共助していくことで、生産年齢人口層と高齢者層が協働する社会に進化していくための過程に他ならないと考えます。

 スマートフォンに代表されるような、簡単で便利に世の中を合理化してくれるデバイスは著しい速度で現代社会に普及しています。何かを調べるにしても、大抵はスマートフォンを通じたインターネット検索から始まると言っても過言ではないでしょう。インターネット検索のテクノロジーは記憶や情報等を効率よく蓄積し、予め用意されたデータに辿り着く速度が速まるといった工数削減の合理化典型例でしょう。そして、それは一つの作業が速まった分だけ、アイドルタイムを産み出し、過去になかった余剰時間が創出され、新たな事柄への対応を可能にしていくと考えます。

 これからの時代に、新たに取り組むべきことは何か。日本人はこれまでも助け合うことで大切な生命を繋ぎ、時代を乗り越えてきました。時代が変わろうとも本質は変わりません。他者を慮り、助け合う、和の精神を発揮できる人材こそ、いつの時代も変化に適応し持続性を高めるまちづくりの根幹を担います。

【子供の思考をアップデート】

 もしも、私が子供の頃に青年会議所の事業に参加していたら、当時の青年会議所メンバーはどんなことを教えてくれ、示してくれたのだろうか。今、私が青年会議所メンバーとなり、子供たちへ特に伝えたいことは、子供自身に内包されるモチベーションという要素が、とても重要だということです。

 興味のあることと興味のないことに費やす1時間では、天と地ほどに気付きや学びの量、質に差があります。また、興味があることには自然と費やす時間量も増えていき、経験を経て質が向上し、更に量をこなせるといった、時間対効果の高い好循環が生まれます。例えば、勉強が苦手だったとしても、特定の趣味では誰にも負けないというモチベーションと知識があれば、どんな分野でも、そのスキルは必ず重宝されます。そこで、自身の最大限の能力を発揮した際には、自分自身が輝いているはずです。モチベーションを持ち合わせ、興味のあることに熱中し、没頭していけば、必ずその先には活躍の場があり、更に数多くの人を惹きつける魅力があれば、職業として成り立つはずです。

 生まれ持った環境や周囲に依存するのではなく、モチベーションという意欲的な動機が、将来に重要だというメッセージを子供たちに伝えてこそ、青年会議所が青少年育成の場として機能するでしょう。

【結びに】

 青年が青年らしく侃々諤々と地域を議論し合い、地域の為に青年会議所運動を展開し、更に次の青年世代に未来を託していく、この不連続の連続が歴史となる。それが、創立56年目を迎えた伊勢崎青年会議所に対する私の誇りです。現在は先人達の功績のうえに成り立ち、未来は現在の延長線上に形成されます。

 公益法人格を有し、責任を持ち、地域の青年がまちづくりに真剣に取り組んでいく、この青年会議所運動を続けてくることができたのも、行政の皆様、関係諸団体の皆様、そして、地域の皆様のご理解とご協力があってこそです。これまでお世話になった皆様へ、改めて心より御礼申し上げます。引き続き、伊勢崎青年会議所へご指導ご鞭撻並びにご協力を賜りますよう切にお願い申し上げ、公益社団法人伊勢崎青年会議所2019年度理事長所信と致します。

1 国土交通省国土審議会政策部会「国土中期展望」中間とりまとめ
出典:http://www.soumu.go.jp/main_content/000273900.pdf

2 内閣府経済財政諮問会議 選択する未来委員会 人口減少問題と地方の課題
出典:http://www5.cao.go.jp/keizai-shimon/kaigi/special/future/0130/shiryou_09.pdf

3 「オポッサム(OPoSSuM)」未来カルテ
出典:http://opossum.jpn.org/news/2018/10/03/455/

4 伊勢崎市未来カルテ
伊勢崎市
西暦 2015年 2040年 2040/2015
総人口 208,814 192,986 92.4%
年少人口(0〜14歳)比 14.1% 11.7% 76.6%
生産年齢人口(15〜64歳)比 61.5% 56.3% 84.7%
65歳以上人口比 23.6% 32.0% 125.3%
75歳以上人口比 11.1% 17.2% 143.2%
注)国立研究開発法人科学技術振興機構(JST)が推進する戦略的創造研究推進事業(社会技術研究開発)「持続可能な多世代共創社会のデザイン」研究開発領域で採択されたプロジェクトです。